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女工哀史ヲタ編~昭和の骨董品トランジスタ達

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EIAJ登録前の昭和生まれトランジスタ達

ふとした事から、今じゃ誰も見向きもしない古いトランジスタが手元に来た。

まだEIAJ登録前で、各社好き勝手な型番を付けていた頃の製品、若いお姉さん達が交替勤務で一生懸命組み立てていたであろうトランジスタ。まだ私が生まれる前、タネにすらなっていなかった頃なんだよね。

一つは、NECのロゴが入った 扁平型トランジスタST-121、後に2SB-114となったやつ。
もう一種類は、東芝ロゴの2S52、後に2SA-52となったやつ。

NEC ST-121, TOSHIBA 2S52

未だに未使用でストックされていたって事が凄い事だなって思うのだけど。今なら単価50円もしないで入手出来る素子よりも性能的には全く劣るのだけど当時は相当に高価だったらしい。

年代的には『ニッポンの未来はバラ色に輝いてやまない』って誰もが思っていたであろう、高度成長期前半から中盤の製品だろうか。わざわざ性能悪いの承知で何か作るってのもどうかと思うので、コレクションかなって思うけど。

神戸工業(TEN、後に富士通)って知ってます?

子供のころ、リンゴ畑の隣に神戸工業って看板のあがった工場があって、畑の入り口と工場の通用門が面していた。夕刻になると綺麗なお姉さん達がぞろぞろと通用門から出て行くのが毎日の光景だった。

神戸工業は後に富士通に吸収合併されたのだけど、若い女性達の勤務形態に『トランジスタ型交替勤務』ってのがあって、トランジスタ組み立てラインに従事する女性達に適用されていた。早番は朝6:00~14:00まで、遅番は14:00~22:00って勤務形態で、トランジスタ工場が自動化でなくなっても勤務形態は残っていたな。

1990年代前半だったっけ、男女雇用機会均等法のお陰で女性に深夜勤務が可能になったので、その勤務形態は消滅したけど。男性従業員には『ワイヤーモールド型二交代勤務』なんてのもあったな。これはトランジスタ型より更に古くて電話交換機用ワイヤーモールドリレーを作る職場で運用されていた。日勤は8:10~16:55(残業アリで19:10)、夜勤は19:10~翌朝8:00まで。深夜勤務手当と交替勤務手当が出るので、年齢の割に高いクルマを乗り回してる人達が多かったな。

当時小学生だった私は、畑の手伝いに行くのが日課で。晩秋の夕刻になると薄暗くなって心細くなってくるし、時間も知りたい訳ですよ。で、たぶん普通勤務を終えて通用門から出て来たお姉さんをつかまえて、『オバチャン、いま何時?』って良く聞いていたもんです。みんなにっこりしながら、『手伝ってるの、偉いね。いまね、5時10分だよ』なんて教えてくれたもんですが。なかにはおっかないオバチャンもいて、いつも通り時間を聞いたら、一緒に歩いていたオバチャンと一緒になって『ちょっと、今なんて言った?アタシはオバチャンじゃないの、お姉さんなの。お姉さんって言いなさい!』って耳を引っ張られてしまった事があった。それ以来オバチャンが恐くなり、時間を聞くのをやめたのは言うまでもないが。あのオバチャン、生きていたら何歳になってるんだろう。

で、どうなのよ性能は?

性能なんか『お察し』ってレベルのは理解してるつもりだけど。当時はコイツら使って製品を完成させて市販していた訳でしょ、どんなもんか確認してみたいじゃないですか。

昭和の骨董品トランジスタ

テスターの導通チェックだけでも良否の確認はある程度出来るし、簡易チェッカーでチェックするって方法もあるのだけど、それだけじゃ見抜けない不具合ってのが半導体ってのはあったりするんだよね。
※5V掛けてテストするとOKなんだけど、10V掛けるとリークが極端に増える、、、とか。
テスターなんかだと、内蔵電池電圧がテスト電圧になるので、3V程度しか電圧が掛からない。簡易チェッカーだって似たようなもんだし。
そんな時は慌てず騒がずに、カーブトレーサを使うんですよ。

カーブトレーサで昭和の骨董品トランジスタを調べてみる

カーブトレーサって何?食べられるの?気持ちイイの?ってお方は、少し勉強して来てくださいな。

ST121

NEC ST121(2SB114)

2S52

TOSHIBA 2S52(2SA52)

とりあえず、特性を測ってみます。上側が扁平型トランジスタST121(2SB-114)、下側が2S52(2SA-52)、どっちも普通な感じに見えますね。上側のST121はベース電流がゼロの時にもコレクタ電流が流れていますが、これがリーク電流と言われるもので、素材がゲルマニウムでは(素材って言うより、半導体の純度や製造方法の影響が大きいらしいが)ある程度仕方ない現象です。これでも、増幅器としての機能は果たしますので、大雑把には問題ないでしょう。

ん?、、、なんじゃこれ?

古いのに結構やるじゃん、、、って思っていたら。

2S52-NG

2S52-NG

2S52-NG2

2S52-NG2

2S52の二個目なんですけど、何か変なのに当たってしまいました。ちょっと電圧上げただけでやたら電流が流れるんですよね(上側画像)。一旦電圧を下げると収束するので、リーク電流が大きいんじゃないかと。

徐々に電圧を上げていくと、2.0Vを越えたあたりから急速にリーク電流が増加する。まぁ、1.5Vの乾電池一個で駆動するような回路(ゲルマラジオ+1石とか)なら問題無く使えそうなのですがそれ以上の電圧が掛かる回路だと、確実に動作不良起こすんじゃないかな。右側の図の領域で使えば問題なさそうです、、、が。明らかに耐圧不良だと思います(新品未使用なんですけどね)。

ん゛~、前にも見た事あったな、こんなん。

コイツらはEIAJ登録前の古いトランジスタだけど、EIAJ型番のトランジスタで見た事あったな。確かメーカー刻印のない2SB-22だったと思うけど、20個測定して、3個位がこんな感じだった記憶がある。本来ならSANYOマークがある筈なのに無刻印だった事を考えると、リマークされた粗悪品を掴まされた可能性も否定出来ないけどね。

シリコントランジスタの場合、新品未使用でこんな事はまず起きないと思うけど、中古品の場合はわからないんですよね。導通チェックや簡易テスタでは問題なくても実際に使うと挙動がおかしいとか、動かないとか。簡易検査はあくまでも簡易検査と思った方が吉です。

まぁ、こんなモン使って何が出来るって、当時の回路の(今でも殆ど変わらないけどね、6石スーパーラジオの回路なんて、それだけ研究されてるって事かな)復刻版でも作って楽しむ程度だろうね。特に2S52なんてCobが大きいので(2S51、2S52、2S53は三兄弟で、Cobが10.5pFもある)、それなりに工夫が必要かも知れない。現在のシリコントランジスタ回路に置き換えるなら、2SA-100兄弟の方がCobが少なくて、楽に置換が出来るかも知れないな。

ついでに~変態種トランジスタを

ついでに、ケースがベースになってる変態トランジスタ。

2SC504

2SC504

2SB164

2SB164

メタルパッケージ(TO-5、TO-66、TO-3とか)のトランジスタなんて既に絶滅種なんだけどさ。TO-5パッケージのトランジスタって一般的にコレクタがケースに接続されている。高周波を意識した奴だとケースがエミッタなんて事もあるけど。

コイツ、2SB-164は、そんなの関係ねぇっ!って感じでベースがケースに接続されてる変態種。しかも、外側から溶接したのがミエミエって荒っぽさ。用途が低周波用なので問題ない、、、んじゃないかと思うけど、初めて見たですよ、こんなん。それにしても、どっかのオーディオの神様の影響で特定種類のトランジスタが枯渇してしまったり、アホみたいに高騰してしまうってのはどうかと思うんだよな。

2SA-606 / 2SC-959なんて、昔は跨いで歩いたもんなんだけど(2SA-606 / 2SC-595に放熱タブが付いたバージョンが 2SA-607 / 2SC-960、、、な)。主観だけで素子を批評するってのは、好きじゃないなぁ。

ガキの頃なんて、なんだゲルマニウムトランジスタか、ゴミゴミ!とか言ってバンバンバラして中身観察したり焚き火にくべてしまったりしたけど、冷静に見てみると、リーク電流と温度特性以外は普通に使えるって感じがするよね。ま、わざわざそんなモン使って何かしようとは思わないけど、当時のゲルマニウムトランジスタ使った製品だって現代の製品と遜色ない性能だったりする訳だし。あえて帯域の狭いであろうゲルマニウムトランジスタの音を好む人が存在したりするし。

私らオッサン世代は、子供の頃に聞いたラジオの音が刷り込まれていて、ラジオの音はこうなんだって思い込んでる部分があったりするのかもって思ったり。だってさ、今風の最新ラジオの音って悪くないけど何となく耳に馴染まなかったりするんだよね。手元に松下のRF-U350があって、決して悪い音ではないのだけど。RF-888で聞く方がラジオの音らしくてしっくり来るんだよね。感度が良いって絶賛されてるSONY ICF-EX5の音なんか韓国製のスピーカーの影響なのかもう論外って感じだし。テレビもそうだよな、昔の木製キャビネットに入っていたテレビって良い音がしたと思うのだけど、小型化されたプラスチック筐体になってからは音がかなり犠牲になった気がする。

現在主流の薄型テレビなんて、前面にスピーカー開口部がないから、側面や下面に開口部があるでしょ、そんな製品は音の明瞭度が良くないんだよね。近くに居れば聞こえるけど、適正な視聴距離を取るべく離れると、何か音が鳴ってるけどはっきりしない、、、って製品が多いな。故に自宅のテレビは外部スピーカー使っていますけど。

音って要素は、素子や装置の影響も受けるけど、人間の個人差や主観が大きいので、難しいやねぇ。故にオーディオマニア相手の商売は儲かるんだろうな(信じる者は救われるのだよ、信+者=儲 だぞ)。

(ken)

神戸工業株式会社(TEN)について

1949年8月5日神戸工業株式会社設立。後の富士通テン。
日本企業で最初にトランジスタを生産し外販した会社。1954年2月発売。当時の価格は1個3,000~4,000円。真空管は「テン真空管」としても有名だった。ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈氏が在籍。

SONY(旧東京通信工業株式会社)が最初と言う人がいるが間違い。ソニーは、トランジスタの特許を持っていた米ベル研究所およびその親会社である米Western Electric社とライセンス契約を結んで、日本初のトランジスタ携帯ラジオ(TR-55)を1955年8月に市販開始。

(kazu)

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