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6石トランジスタラジオの音←何とかなんねぇかな、これ

radio1ban neko ototto

何とかなんねぇかな、これ

色々と調べてみたら、回路方式に起因する周波数特性の悪さと、何が原因だかよくわからない波形の歪みが原因で、坂口杏里のケツ並に汚い波形が出ていた。
で、原因は、プッシュプル出力段のhFEランクの不適合っぽい。2SC-1815を、GRランクからOランクに交換したら結構まともな波形になった。

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

不揃いの、、、

不揃いの・・・で、リンゴを連想する、そう、そこのアナタ。相当なオッサンですね。このドラマがきっかけで、結婚して別れたなんて人達もいましたね。高橋ひとみは、洗足池辺りに住んでるらしい、、、いや、どうでもイイですね。

波形が汚い原因は、バイアス用ダイオードのvfと、出力段トランジスタのVbe特性がマッチしてないんじゃないかと、前回推測したのですが。

Cherry-CK-666-AF_chang_d2

だったら、D2を特性の合った奴に交換してしまえば問題解決するんじゃね?
って思う訳ですよ。
中華製のラジオなんかでたまに見かけるのですが、トランジスタのB-E間をダイオードの代用にしてるケースがあるんですね。

トランジスタは三本足

三本足のトランジスタを、どうやってダイオード代わりにするのさ。
検索すると、あちこちにトランジスタの原理とか、使い方なんてのが落ちてます。
で、その辺は判ってるって前提で。

三本足のトランジスタ、テスターで導通を調べると、B-E間とB-C間は、ダイオードと同じ性質がある事がわかります。
その性質を利用して、D2の代用をさせちゃおうって思う訳です。
よって、出力段と同じ型番、ランクのトランジスタを準備して、B-E間をD2の代わりに置き換える訳です。

※何故B-E間を使うか。

B-C間だってダイオード特性あるから、それでもイイじゃんって思いますよね。
本来トランジスタってのは、B-E間に順方向バイアスを流して、C-E間に流れる電流を流取り出して使うものであり、それを前提に設計されています。
B-C間に電流流すってのは想定してないんですね。
色々と捻った使い方もあるようですけど、本来の使い方でない場合もありますし、そうすると期待した性能が得られない場合もあります。

ダイオード特性を確かめてみる

実際にどんな特性なのか、カーブトレーサを使えば一発なので。2SC-1815GRと、キットに元から付いていたD2を調べてみますか。

CHERRY CK-666 2SC1815GRvsD2

↑上のグラフ、どっちもスケールは一緒で縦軸が電流で、2mA/div、横軸は電圧で100mV/divです。
上がキット付属ダイオード、下が2SC-1815GRのB-E間の特性になります。判りやすい様にピンクの縦線を引いてみました。
電流が10mA越えたあたりから、微妙に違ってるでしょ、ダイオードの方が電圧高めに出ています。
もしかすると、これが原因なのかも知れないです。

まず、元に戻す

6石トランジスタラジオキット (CHERRY CK-666)

hFEがOランクのトランジスタに交換してしまってあるので、元の汚い波形が出る様に
GRランクのトランジスタに戻します。
こうゆう場合は、ブレッドボードが便利かなって思ったりしますね。
※便利な反面、配線が長くなるのと、電極間容量が気になって、敬遠しちゃうんですけど。

D2を交換する

CHERRY CK-666

GRランクの2SC-1815に戻して、D2を2SC-1815GRに交換します。
コレクタは使わないので、根本から切断してしまっても良いし、後で何かに流用するかもって方は、写真みたく、コレクタを後ろ側にひん曲げてしまっても良いと思います。
正しくはD2を取り外してそこに取り付けるのですが。
基板の端子間が遠いのと、面倒なので、D2のアノード側を切断して、そこに半田付けしてしまいました。
※”どうせ、すぐにまた元に戻すでしょ”って思いながら見てる人、居るよね(苦笑)。

で、どうなったか

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

よっしゃぁ、これで坂口杏里ともおさらばだぜぃ、、、と思いながら、電源入れてみると。
あ゛れ゛ぇ゛、、、何もかわった様子がないじゃん、なんでだよ。
20kΩのボリュームをグリグリしてみても、あまり変わった様子がないんだよねぇ。

波形が綺麗になっていたら周波数特性も測ろうかと思っていたのに。
単純にバイアスだけの問題じゃなくて、入力トランス(T1)とのインピーダンスマッチングの問題もありそうな気がするな。hFEランクが変わると、入力インピーダンスも変わるのですけど、小難しいので興味のある方は調べてみてください。

がっかりしたので、余談な

トランジスタをダイオードとして使う場合、B-E間と、B-C間の二つがあるって書いたでしょ。
どっちも特性同じかと思ったら、そうでもないんだな。
VfはB-E間よりもB-C間の方が低く出るのね。

2SC1815GR VBE VBC特性

↑上のグラフは2SC-1815GRなんだけど、上がB-E間の特性、下がB-C間の特性なんだわ。
わかりやすくする為にピンクの縦線引いてみたけど微妙に違うでしょ。
これは、品番や接合部分の構造によっても違っていて。
次は2SC-281で同じことやってみようかね。

がっかりしたので、余談な-2

2SC-1815GRの特性で、大きな差はないかなって感じだったのだけど。
もう骨董品って言っても良い位に古い2SC-281だと、こんなに差が見えるんですね。

2SC281 VBE VBC特性

もっとも構造(製法)が違うので、その差が見えてるだけなのかも知れないですけど。
2SC-1815:シリコンNPNエピタキシャル形 (PCT方式)
2SC-281:Passivated Mesa(PMトランジスタ)
PMトランジスタ 2SC281

がっかりしたので、余談な-3

トランジスタをダイオードの代用にって話の続きで。
前頁のグラフでわかる様に、B-E間とB-C間では特性が異なるので、良く教科書に書かれてるダイオードを2本接続した等価回路ってのは厳密には正しくないんだな。
で、B-EC(ベース、エミッタ、コレクタを結線して、あたかもダイオードを並列にした様なイメージ)で使う人がいるけど。
B-E間よりB-C間の方がvfが低い傾向なので、電流の大部分はB-C間に流れてしまう。
そして、B-C間に電流を流すなんて想定して設計されてないので。
そうゆう使い方は好ましくないって言うか、個人的にはしない方が良いんじゃないかと思ったりしています。
※B-E間に流せる電流は、Ic(max)より少ないです、詳細は仕様書に記載されてると思いますが、不明は場合は最大コレクタ電流の1/10程度と見ておけば安全です。

使ってるオシロは、余談な-4

波形みたり、周波数特性測ってるオシロなんだけど。
あれ?オシロで周波数特性なんてみれるんだっけ、そもそも信号源はどうしてるのさって思うでしょ。

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

今回使ってるオシロは、KeysightのDSOX-1102Gって奴で、帯域は100MHzだし、2chしかないし、特に魅力的な要素ってないのだけど。そう、オシロスコープ的にはね。
コイツね、20MHzまでのFunction Generatorを内蔵してるモデルがあるんですよ。
オシロだけでイイってなら、最廉価が帯域50MHz、2chで6万円前後。そこにFunction Generatorを追加すると9万円弱かな。
100MHz帯域(70MHzをベースに100MHzのアップグレードオプションを追加する)でFunction Generator追加して14万円程度か。
で、そのFunction Generator機能を利用して周波数特性の解析が自動で出来ちゃうんですね(ちょっと設定項目が貧弱だけど)

何よりFunction Generator内蔵で、AM/FM変調機能も搭載されてるってラジオマニアには嬉しい仕様じゃないですか。
指定代理店なら即納らしいし、Amazonでも売ってるし。なにより、ちゃんとしたメーカーで校正成績証明書が添付されてくるって測定確度が保証されるってことですからね。
謳ってる帯域まで動かない、秋月の中華オシロなんかより100倍イイと思いますよ。
※秋月の中華オシロがダメって言ってる訳ではないです、誤解のないように、ね。

さってどうしようか

出力段のバイアスを色々弄ってみたのだけど。GRランクを使う限りどうもにならないっぽいんだよな、坂口杏里の呪縛から逃れられないっぽいのよ。
推測出来る原因は、入力トランス(T1)とインピーダンスが合ってないんじゃないか、出力トランス(T2)もインピーダンスが合ってないんじゃないか、、、ってこと。
今時トランス式なんて時代錯誤な回路と戦うのか、サクっとIC化するのか。
単純にラジオ聴いて楽しみたいだけなら、IC化するのが最も効率的だと思う。け・ど・ね。気に入らないのよ、こんな単純な回路に翻弄されてるのが。

Cherry-CK-666-AF_OUTPUT_TRANS

取り敢えず、IC化するって方向で、汚い音とはおさらばして。トランスはジャンクの古いラジオとかをバラして調達しようかな。
メーカー製のラジオって同じ様な回路方式で遙かにパワー出してるし、まともな音がしてる、その差はトランスの大きさとかもあるんだよね。

やっぱ、ダメだわ、これ

出力段のトランジスタをOランクに交換して、バイアスダイオードも元に戻して。
まともな波形になったところで、どんな音に聞こえるかスピーカーを接続して、放送を受信してみた。
キンキンした音は相変わらずなんだけど、妙に濁った様なおかしな音は消えてるかな。
少しは改善した感じだけど、やっぱり長時間聴くにはツライものがある。
SONYの防災非常ラジオの方が小口径なスピーカーの癖にまともな音がするんだもん。

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

簡単にはまともにならないなぁ、と思いつつ電源ラインをチェックしてみたら。
あら、やだ。
こんなに電源が揺れてるんですよ(緑のラインね)。
電源が9Vの006Pだから、内部インピーダンスが高いのだろうけど。
こりゃ、電源から改善しないとダメだなぁ。

デカップリング回路は有効だぞ

出力段の電源が結構揺れてる事に気が付いた訳ですが。
出力段とドライバ段の間の電源回路に『デカップリング回路』と呼ばれる、R11とC9が入ってるんですね。R11とC9でフィルタを形成して、出力段の電圧の揺れを吸収してドライバ段やRF回路に影響しない様にするのが目的です。

Cherry-CK-666-AF_decoupling

そこを観測してみると、揺れは殆ど見えていません、回路の目的を達成している様です。
乾電池が消耗してくると、この回路でも吸収出来なくなって、音が大きい瞬間に変な音がしたり、発振したりします。

KEYSIGHT DSOX1102G Digital Storage Oscilloscope

電源について考える

9Vの積層乾電池じゃ電源が揺れる事がわかった。いやいや、小中学生の頃はこんな環境でラジオ楽しんでいたんだね、知らないってコワイですね。
で、電源をどうするか。簡単にはトランス式のACアダプタ持って来て、3端子レギュレータで安定化すれば良いのだけど。ACラインからノイズ拾ったりする事もあるんだよね。
最近はスイッチングタイプの家電製品ばっかで、一般家庭内はスイッチングノイズの巣窟になってるしさ(パソコン、エアコン、照明、冷蔵庫、TV、場合によってはオーディオ製品の電源部まで)。

その前に電圧を検討しないとな。
現状は9Vだけど、数ワットのICアンプだと12Vなんだよね。
1W程度で良いなら、6V~9Vって選択肢があるし。3Vで動作させるとなると、全面的に定数の変更が必要になるから面倒だしな。
9Vのまま使えるICアンプを検討すると、LM386、TA7368辺りが使えるかな。
12Vだと更に選択肢が広がり、LM380(←40年前のICが現役ですよ)、TA7252(東芝製はディスコンね、UTC製が入手可)あたりも良いかもな。
電源に余裕があると、使える素子も自由度が増して来て楽しいんですよね。

TA7252のアンプ

TA7252A AMP

秋月の組み立てキットで『AE-7252』ってのがある。東芝製のTA7252Aを使ったICアンプで12Vで5W程度のパワーが出せる。そこまで必要かって言うと必要じゃないと思うけど。
普通の室内で1Wもあれば必要充分じゃないかと思う。そこは余裕と考えれば良いのかと思ったりね。普通にラジオ聴く程度なら放熱も気にしないで済むし。
※コイツは別の用途で重い負荷を駆動させるので、大きな放熱器に取り付けています。

 

次回は

幾つか候補に挙がったアンプの特性を調べてみようかと思います。
キットで遊ぼうじゃなくて、電気工作遊びになってる気がしなくもないな。
(ken)

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