意外な盲点があるぞ
DSOX-1102Gで色々出来て面白いのだけど。気をつけていないと思わぬところで回路を壊したり、最悪は測定器まで壊すなんて事態にもなりかねないので。恥ずかしい話ですが自身の経験を踏まえて、幾つか注意点をかいてみようかと思います。
例えばDSOX-1102Gを使って、Function Generatorから信号を入れた状態で、各部の信号を観測するなんて場面は容易に想像がつく。
Function Generatorとオシロが別機器の場合だとあまり意識しないのだけど。このDSOX-1102Gの場合、Function GeneratorとオシロのGndは共通、即ちつながってるって事を意識して欲しいんですね。
従来の感覚でいくと、オシロのプローブなんてどう当てても見られるじゃん、テスタと同じ感覚で扱っていたと思う。例えば、上の写真に写ってる回路のAFドライバ段の場合。エミッタ電圧見る時は、Gnd-エミッタ間を見る筈です。コレクタ電圧見る場合も同様で、Gnd-コレクタの電圧を見ます。
んじゃ、エミッタ-コレクタ間の電圧見たい場合ってどうしますか?テスターなら問答無用でエミッタ-コレクタにテスト棒当てればOKだったですよね。オシロでも基本的にはそうなのですが。オシロのプローブって片側がオシロのGndだって事を忘れないで欲しいのですね。
ここで、DSOX-1102GのFunction Generator側の接続がない場合は何も問題おきません。が、Function Generator機能を使っていて接続がある場合は、Function GeneratorのGnd側が被測定物に接続されてる訳です。その状態でオシロのプローブのGnd側をエミッタ又はコレクタに接続した場合、どうなるでしょうか。オシロのプローブを経由してGndにつながってしまうのです。
Gnd(アース)は重要だけどショートの原因にもなる
ラジオのドライバー回路程度なら、音が出なくなるとか、測定値がおかしい程度で済みますが、より電力を扱うパワー段だったらもっと恐ろしい事になります。例えば、出力PP段のコレクタにプローブのGnd側を当てた場合は、電源ライン→出力トランス→プローブGnd→オシロ本体→Function Generator側Gndって経路で大電流が流れます。すぐに気が付いたり、短時間ならダメージ受けないでしょうけど、あれ?どうしたんだ、おかしいぞってその状態が長く継続すると、出力トランスに過電流が流れて異常発熱したり、最悪破損させてしまいます。
もっと電力を扱う回路でこんな事が起きると、プローブのケーブルが焼損したり、装置のヒューズが飛んだりって事もあり得ます。オシロってのは視覚で確認できるので、直感的で非常にわかりやすいのですが、場合によっては危険な場合も出て来ますので、気をつけて扱って欲しいと思います。
と、ここまでが一般的な注意事項で。
実は、落とし穴って言うかもっと訳のわかんない短絡事例に遭遇したので、紹介したいと思います。
部品箱から出て来た古い完成品のラジオ基板。2SA101、2SA101、2SA101、2SB175、2SB172 x 2 って標準的な6石スーパー構成の基板で。電源やスピーカー端子がラグで付いてるって珍しい作りになってるのね。
謎解きは楽しいのよ-1
とりあえず回路を追いかけて、電源端子を見つけた。早速電源を入れてみたいのでだけど、仕様が全く不明なので電源電圧も見当がつかない。そうゆう場合どうるかって言うと。推測するんですよ。
まず電解コンデンサの耐圧でおおまかな推定が可能です。こいつは10V品を使ってるのでそれ以下である。形状からしてポータブルだから乾電池駆動でしょ、だとすると、3.0Vか、4.5V又は6.0V、少数派で9.0Vってところか。キット製品ではない量産品と見て取れるので、9.0Vはまずナイな。だとすると、3.0V~6.0Vの間と推測される訳です。
いきなり高い電圧掛けると大電流流れる可能性があるので、電流を監視しつつ低い電圧から試していきます。
謎解きは楽しいのよ-2
電流計を入れて、電源に設定可能なら100mA程度の電流制限をかけておきます。徐々に電圧を上げていき3.0Vで様子をみてみます。すると20mA程度の電流が流れています。そのまま徐々に電圧を上げていくと。
徐々に電流が増えていき、4.5V越えたあたりで60mAまで増加しました。こんな程度の回路で無負荷状態で60mAってのは明らかに流れすぎと思います。このまま放置すると熱暴走の可能性もありますので、これ以上電圧を上げるのはやめて、推定ですが3.0Vが適正なんじゃないかと判断します。回路が生きてるか局発を確認すると発振はしている模様です。
落とし穴にはまる-1
さっとプローブを当てて、局発が動いてるっぽいので、ちゃんと測ろうと思い、プローブのGndクリップを基板のGndに接続したんですね。そしたら何も出なくなっちゃって。おかしいな、何が起きてるのさ。気持ちを落ち着けてよーく挙動を観察すると。プローブのGndクリップを接続すると流れる電流がドカっと増えて電流制限に入ってしまう事がわかった。
状況を分析すると。被測定物はPNPトランジスタ使った回路、よってプラスアースの回路になる。そこにオシロのGndを接続すると電源ショート状態となる。プローブのGndを基板のマイナス側に接続すると過電流は流れない。オシロと電源は絶縁されてる筈なので、プローブのGndがどこに触ろうが関係無いと思っていたのだが。
落とし穴にはまる-2
使った機材は菊水の電源、PMC18-3とUSBオシロU2702Aとパソコンなんだけどね。どこに短絡経路があるのか脳味噌に液体窒素ぶっかけた気持ちで考えてみたですよ。原因は下の写真でした。
こんな環境で、電源コードはアース付きの3Pのケーブルで配線してるんですね。オシロとパソコンはUSBで接続されています。
一般家庭でアース付きコンセント使ってる環境って滅多にないとは思うのですけど。今回はこれが原因で、電源→パソコン→USB経由→USBオシロ→プローブ って流れで短絡回路が形成されていました。
対策は、電源のマイナス端子とGnd端子のショートバーを切り離すとか、電源コードをアース無しの2Pに変える等がありますけど。保護回路のない電源とか大電力の装置なら相当な大事故になりかねないんですよね。
(ken)