はじめに
現代の生活において、テレビやビデオデッキに限らず様々な電化製品があふれています。
もちろん、こうして皆さんがご覧になっているホームページもパソコンを使っている事と思いますが、そのパソコンも電子回路のカタマリです。
ここではその電子回路を自ら組み上げていく事を目的としています。最初は簡単な物から始め、徐々にステップアップしていきますので、そんなに力まずに取り組んでいただけるのではないでしょうか。
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最近では電子回路工作が趣味として徐々に拡がっているようです。初心者向け入門書籍が沢山発行されてますし、あちこちのホームページでも題材として取り上げられています。
また、かつて一世を風靡した「電子ブロック」の復刻版が発売され、根強い人気に支えられている事もその一端であろうかと考えられます。
一般的に、電子回路というと基板に様々な部品(抵抗やコンデンサ、トランジスタなど)を決められた順序で配線し、はんだ付けにより組み上げていきます。
ですがその場合、まず「はんだ付け」そのものの技術が必要である事、そして配線やはんだ付けに失敗した時のやり直しが面倒な事、それが初心者が取り組むにあたっての「ハードル」となります。
先に挙げた「電子ブロック」も、その「ハードル」を低くする一つのカタチです。とても良く出来ていますし、これを書いているワタシも当然ながら所有しております。
しかし、その中で作り上げる事が出来る回路は決められたモノだけであり、そこには限界があります。
そこで、ココではより簡単に取り掛かるため、”ブレッドボード”(BreadBoardと書きます)と呼ばれる道具を使っていきながら電子回路工作への理解を深めていきます。●
ブレッドボードとは?
さてさて、ブレッドボードとは何?っていうトコロから始めましょう。まずはそのブレッドボードを見ていただきましょう。
見ての通り、1mm程度の穴が縦横に並んだプレート、それを支える板、電源用の端子があります。
たくさんある穴はそれぞれに独立しているのではなく、一定の決まりによって内部的につながっています(詳細は次項の構造で説明します)。
その穴に抵抗やコンデンサなどの部品から出ているリード線を差し込み、カラフルなジャンパ線使って配線して使用します。上記の例では乾電池2本による電圧3Vを使っていますが、もちろん別途に電源装置を用意する事で、5Vや12Vなどの電圧で回路を組むことも可能です。
ブレッドボードとは、つまりはんだ付けなしに部品を配線し、実際に電気を通して回路を動かす事が出来るのです。しかも各々の部品は取り外しが可能であることから、もし配線に失敗しても容易につなぎ直すことが出来ます。
一般的には、基板を使ってはんだ付けし、実際に回路として作る前の段階で試験的に動作確認を行う為に使用されるブレッドボードですが、電子回路工作を趣味として始めるには非常にうってつけと言える道具です。
なお、他にも「ソルダレスボード」(はんだ不要ボード)と呼ばれることがありますが、ここでは「ブレッドボード」と呼びます。●
ブレッドボードの構造
ここで紹介するブレットボードは、電子部品の販売で有名な「秋月電子通商」で入手した物です。なお、購入のための詳細については末章「買い揃えるには」で説明しています。
まずはブレッドボード本体の外観です。ここに示したものは縦が約10cm、横が約18cmくらいの大きさです。厚みは端子部分を除けば1.5cmというところでしょう。
前述の通り、大きさ1mmほどの穴が無数に開いてます。この穴に、電子部品についているリード線を差し込んでいきます。このリード線の線径は大体0.6mm程度のものが多い(というよりも、基本的に当HPで使用する部品はそのサイズに当てはまる物を選んでいます)ので、さほど力を入れなくとも簡単に差し込めます。
さて、この穴ですがその奥に端子が組み込まれてまして、その内部でつながっています。下記の画像にその一例を示しています。
上下両端にあるのは、主として電源を配線するためのブロックとなっており、+(赤色)/-(青色)それぞれがつながって(黄色囲み方向)います。またその間に挟まれた部分は部品を配置するためのブロックであり、真ん中の溝をはさんで上下それぞれ5つ縦に並んだ穴がつながっています。ココには縦方向にA~E、F~Jの記号と、横方向に1,5,10・・・と番号が打ってあります。
もう一つ、ブレッドボードには「ジャンパー線」(ジャンプワイヤとも呼びます)という物が必要です。部品に付いているリード線を組み合わせるだけでは限界があるため、それを補って配線するために使います。今回紹介したブレッドボードには、以下のようなジャンパー線のセットが付属しています。
ジャンパー線の両端は被覆が無く、ブレッドボード上の離れた位置にある穴同士を接続することが出来ます。また、以下のようにジャンパー線は色毎に長さが異なっており、ブロックにある穴の間隔に合わせて使用します。
そうやってボード上に部品とジャンパー線を配置して電源をつなぐとこのような感じになります。
この上記画像にある例では、左上の大きなボタンスイッチを押すと左右に置かれてある発光ダイオード(LED)が、さも踏切にある遮断機のランプのごとく交互に点滅する回路です。●
基本的な使い方
それでは実際にブレッドボード上へ部品やジャンパー線を配置してみましょう。今回例として作る回路は以下のものです。
1.5Vの乾電池2本を使って3Vを作り、スイッチを介して発光ダイオード(LED)を点灯させるというものです。
まず最初にどこから始めるか・・・ということですが、これはどこから始めても構いません。スタートを決め、それから回路をたどって戻ってくれば良いのです。
ですが、ここでは例として「マイナス電源」から始めます。
それでは実際に配置していきましょう。最初に、電源の通す上下ブロックのうち、下側にある-(マイナス)からジャンパー線(オレンジ色)を置きます。そしてその先にスイッチを置きます。
スイッチには2つの端子があり、ボタンを押すことで両方がつながります。従って最初に置いたジャンパー線とつながっているものとは反対側の端子につながるように次のジャンパー線(オレンジ色)を置きます。ここでは部品配置のブロックにある溝をまたがっています(この溝の両側はつながっていません)。
そして、さらに先に発光ダイオード(LED)を置きます。この発光ダイオード(LED)には、+/-の極性があります。それを逆に置いてしまうと光らないばかりか、場合によっては壊してしまいますので注意が必要です(詳しくは改めて説明します)。
最後に抵抗を置きますが、この抵抗は発光ダイオード(LED)と+(プラス)の電源との間にありますので、片側のリード線は、上側の電源ブロックの+側に入れてしまいます。
これで回路をマイナスからプラスまで一本の道筋で組み立てることが出来ました。参考に画像にその通り道を示してみました。
ここまでで電源を上側ブロックのプラスと下側ブロックのマイナスにつなぐ事で完成しますが、ここでは上側のプラスを下側ブロックのプラスまで下ろしてきます。まず上側ブロックのプラスからジャンパー線(茶色)で真ん中の溝を乗り越えて置き、さらにそことつながる位置からプラスの所までもう一本のジャンパー線(黄色)を置きます。
そしてそのプラスとマイナスに電源を接続することで出来上がりです。ここでは電源と接続するためにワニぐちクリップを使っています。さらにプラスとマイナスの電源の穴にリード線の切れ端を立て、そこにクリップを挟んでいます。
ではスイッチを押してみましょう。この通り、発光ダイオード(LED)が点灯します。
ここで示した例では、単純な一回りの回路ですので分かり易いかと思います。実際の回路ではその通り道が幾筋もあって混乱するかも知れませんが、電子回路はプラスもしくはマイナスの電源からスタートして必ずもう一方まで帰ってきます。従って複雑な回路であっても、その中でいくつかの回路に分けて考え、一つ一つの回路を順番にたどってゆく事で組み立てることが出来ます。●
その他の道具類
ブレッドボード本体の他に、あると便利な道具を紹介しましょう。
ラジオペンチ:電子部品の中には指では扱いにくいほどの小さなモノがあります。またリード線を曲げたり、ボードに張り付けたジャンパー線が取りにくい時などにも使います。
ピンセット:ラジオペンチと同じような使い方をしますが、単に部品をつまんだりするようなあまり力がいらない場面で使用します。
ニッパ:主にリード線を切断するのに使います。特に発光ダイオードや電解コンデンサなど、リード線の長さが違うものでは、ブレッドボードの穴に差し込むと傾いてしまって上手くハマないような場合、リード線を切って長さを揃えるために使用します。
いずれも\100程度の物から、上は千数百円の物まで種々あります。が、最初は数百円程度の物で良いでしょう。
マイナスドライバ:ドライバ本来の使い方ではなく、ブレッドボードに張り付いて取りにくいジャンパー線をこじって抜き取るのに使います。
こちらも良い物は高価ですが、当HPの場面での用途では\100程度のもので十分です。
クリップワイヤ:乾電池ケースの配線とブレッドボードの電源端子とを接続するのに使用します。両端にワニぐちクリップが付いており、挟むことで接続できます。
クリップ部分の大きさにより、大中小の3種類程度がありますが、ここで使用するのは一番小さいものでOKです。赤黒の2本、もしくは赤黒含めた5本セットのものでも数百円程度です。
テスター:DMM、デジタルマルチメータと呼ばれるタイプのもので、数値がデジタル形式で表示されます。他にも指針が動くアナログタイプがありますが、使い慣れるのに少しばかり時間が掛かりますので、最初はデジタルタイプの方が良いでしょう。
これはすぐに必要という物ではありません。当HPでも操作方法などは追々にてやっていこうと考えています。
パーツ箱:電子部品は細かい物ばかりです。あれこれ触っているうちに何処かへ飛んでいくこともしばしばあります。使わない部品は、このような大きさの箱に入れておけば無くさなくて済みます。
持っている部品が徐々に増えてくると、小分けできるパーツ箱が必要になってきます。そうなった時に合わせて用意していきましょう。
もちろん道具ですので売られている場所によって、値段がピンからキリまであると思いますが、まずは100円均一ショップなどで安価に揃え、使って行くに従って徐々により使い勝手の良い物に変えてゆけば良いでしょう。●
実践 ~組み込み例~
それでは簡単な例を挙げますので、実際にブレッドボード上に回路を組んでみましょう。
まず、今回組み上げる回路に必要な部品を示します。左から順に、スイッチ(押している間だけ端子が接続するもの)、抵抗(1/4タイプ)、トランジスタ、電解コンデンサ、発光ダイオード(LED)です。
ここではひとまずブレッドボードの使い方を主軸としていますので、部品毎の詳しい説明などは次回以降に行います。
それぞれの部品について、必要とする値と個数は以下の表の通りとなります。
番号 | 部品名 | 値・型名・仕様 | 個数 | 備考 |
1 | 抵抗 | 100Ω 1/4W | 2 | 色帯は”茶黒茶金”です |
10kΩ 1/4W | 2 | こちらは”茶黒橙金” | ||
2 | 電解コンデンサ | 100μF 耐圧16V | 2 | 耐圧25Vでも可 |
3 | トランジスタ | 2SC1815 | 2 | Hfe=100程度 |
4 | 発光ダイオード | OSHR5161P | 2 | 赤色 順方向電圧Vf=2.1V程度 |
5 | スイッチ | SOR-124HS | 2 | 押している間だけONになるもの |
まずは簡単な回路を2題です。左側(Part1)は「基本的な使い方」で説明したものです。右側(Part2)はトランジスタの「スイッチ動作」を実験するためのものです。個々の部品における動作や仕様はともかくも、ここではこの通りにすれば動作しますので、回路図を追いながらブレッドボード上に配置してみてください。
実際に配置した例を示します。前述の「基本的な使い方」で作った回路の隣にPart2の回路を置いてあります。
注意点としては、2点あります。まず、トランジスタを置いてある向きです。型番が書かれてある平らな部分がポイントとなります。もう1点は、発光ダイオード(LED)の向きです。発光ダイオードには長さが異なる2本のリード線があります。この長い側のリード線がプラス電源へ行くような向きに置く必要があります。
さて、今度は少し凝った回路となります。詳しい説明は後に譲りますが、「マルチバイブレータ」と呼ばれる電子回路では非常に基本的な回路でして、両方のトランジスタが交互にON/OFFする事を利用して、発光ダイオード(LED)を交互に点灯させるものです。
こちらも実際には位置した例を以下に示します。今回は電解コンデンサ(C1およびC2)の容量値として 100μF のものを使っていますが、この値を小さいもの(例えば47μFや10μFなど)にすると点滅が早くなり、大きなもの(220μFなど)にすると点滅が遅くなります。
この配置でも、電解コンデンサのリード線の向きに注意が必要です。先に述べた発光ダイオードと同様に、リード線に長短2つがあります。このうちの長い側を発光ダイオードに近い方へ置きます。以下に示した画像では、両方の電解コンデンサそれぞれの長いリード線は、オレンジ色のジャンパー線と同じ並び(縦方向)に差し込まれています。
いかがでしょうか?。「電子ブロック」を使った回路の組み立ても楽しいものですが、このブレッドボードを使った電子回路の作成はその自由度がぐんと高まる分、より楽しめるかと思います。●
(uecchi)
買い揃えるには 2017年版
ブレッドボードがとても人気ですね。たくさんの方が本記事を読んでいただいていますが、「自分でもやってみよう!」って方にお薦めしたい商品があります。
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(2017.09.15 kazu 追加更新)