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ラジオに向いたAF(低周波)アンプを調べてみよう

radio1ban neko ototto

ラジオに適当なAF(低周波)アンプは?

オシロやSSG、Function Generatorの比較なんかをやって、ちょっと横道にそれてしまったけど。ラジオに適当じゃないかってアンプを調べてみたいと思います。今まで買い込んだ部品の中で、使えそうなのをリストアップしてみました。

  電源電圧 出力電力 負荷範囲 部品点数 キット型番 価格(円)
LM-386(aitendo) 5-12V 1.1W @ 9V 8Ω 4-16Ω 10(基板除く) AKIT-220 395
TA-7368(秋月) 3-14V 1.1W @ 9V 8Ω 4-16Ω 8(基板除く) AE-7368 300
aitendo 3 3-6V 200mW程度? 15(基板除く) AKIT-206 395
TA-7252 (秋月) 9-16V 5.9W @ 12V 4Ω 2-8Ω 11(基板除く) AE-7252 500

部品箱を漁っただけで、こんだけ出てきました。
現時点の価格と型番も調べてみたので、掲載しておきますね。

で、4種類ある訳ですが、TA-7252を除いて、ミニパワーって感じのアンプになりますね。
TA7252は車載を意識してるので、電源電圧範囲が高めなのと、よりパワーを出す為に負荷が2Ωにも対応しているタフな奴です(その代わり、放熱をしっかりやらないと、性能を発揮できません)。それでも、こんだけパワフルな奴がキットで500円ってのは安いと思うな。

山水(現在は橋本電気)のドライバートランスと出力トランスは500円じゃ買えないですからね。

おなじみのLM-386から

LM386

表の順番通りに、お馴染みのLM-386から。画像にはボリュームが付いていませんが、実験中に壊れてしまったので撤去しています。
それと、大きな声では言えないのですが、このキット、基板が酷くてすぐにパターンが剥がれてしまいます。さっと組み立てて、あまり半田を入れない様にしないと、ゴミと化す可能性がありますので要注意です。
と、LM-386はセカンドソースが各社から出ていて、より低い電圧で動くものや、高い電圧まで対応した物までバリエーションが豊富です。電源電圧が6V-9V程度であれば、どこのLM-386でもOKです。

LM-386の出力は4V程度(電源は6Vで)

LM386-6V-MaxOutput

Function Generatorから信号を入れて、徐々に大きくしていくと、あるレベルで頭が潰れ始めて、それ以上出力振幅が大きくならなくなります。電源電圧6V、負荷が8Ωで4.3V(pk-pk)が限界って感じでした。
振幅をpk-pkで見てるので、実際のパワーは、この数値の半分程度、500mW程度ですかね。

LM-386の特性は

LM386-6V-100mV-FRA

早速周波数特性を測ってみようかと思います。ICアンプですし、特性を悪化させるトランスも使っていないので200Hzあたりから100KHzまで綺麗に伸びていますね。これじゃ高域が伸びすぎって感じもあるので50KHz辺りから落ちる様にフィルタ入れてやった方が良いかもしれないですね。可もなく不可もない、普通の特性かなって感じです。

そうそう、低域の落ち込みですが、出力のカップリングコンデンサの値によって大きく影響を受けます。今回は220μFですが、これを1000μFとかに替えると、もう少し低域の特性が良くなると思います。

LM-386は3Vでもイケる、、、ぞ

LM386-3V

メーカーの仕様書を参照すると、最低動作電圧は4Vとか5Vって書かれてる事が多い(メーカーによって差がある)LM-386ですが。意図的に電源電圧を低くして、どこまで動くのか調べてみました。出力電力は下がりますが(当然ですね、電源電圧が下がってるんですから)、3Vでも1.4V(pk-pk)弱の出力が得られる事を確認出来ました。

これ以上低くすると、上側の波形が潰れて来て、2.5Vでも波形は出ていますが、明らかにおかしいって耳で判断出来ると思います。

300円のTA-7368はどうよ

TA7368

LM-386は、平均的な特性だったけど、もう一段上のパワーを狙えるTA-7368はどんなもんだろう。余談ながら、東芝オリジナルのTA-7368は既にディスコンで、秋月のキットなら東芝オリジナル品がセットされて来ますが、単体売りだとUTC製(台湾メーカー)のTA-7368になるようです。各社、この手のアナログICから撤退してるので、寂しい限りですね。

LM-386よりイイかも

TA-7368-1Khz-Max

LM-386と同じ条件の電源電圧6Vで波形を見てみると。LM-386は4.3V程度で波形が崩れ始めていたのだけどコイツは4.7V位まで綺麗な波形を出し続ける。その状態で電源電圧を9Vまで上げると6Vくらいになった。
が、ICが熱々になって臭くなって来たので、無理せずに6Vに戻した。9ピンのSIPで放熱らしい放熱がないので無理もない事だと思う。カタログ数値だけで選びがちだけど、実際の環境でどうなのかを見極めて素子や部品を選択しないと『こんな筈じゃなかったのに』って結末になりやすい。
※自動車のカタログ燃費だって同じ事ですよ。
実際の使用でカタログ燃費達成出来るクルマがあったら欲しいですね。

低域の差はコンデンサの値が違うから

TA-7368-20mV

LM-386と同じ様に周波数特性を測ってみます。おや、低域の落ち込みが少なくて、70KHz辺りから若干ゲインが落ちていますね。低域の差は、LM-386の出力コンデンサが220μFなのに対し、コイツは470μFが付いてるからですね。位相(赤のラインね)の廻り方もこっちの方が落ち着いた感じがするな。
LM-386のキットより、95円安くて、基板もしっかりしてるし、特性も良いなら、こっちを使いたいって気にさせてくれますね。

秋月電子で売ってます。TA7368使用小型アンプキット 300円 (2017.09.13現在

3石SEPP-OTLアンプってどうよ

3石SEPP-OTL

唯一ICじゃない、ディスクリート構成のaitendoの3石アンプキット。トランス式は散々だけど、トランスを使わないSEPP-OTLだから、特性は悪くないと予想出来る。
組み立ては基板が小さいし、ランドも小さい、LM-386の基板と一緒で銅箔がすぐに禿げるので、注意して組み立てます。更に回路図とか付属してないので、Webから回路図を拾って来て組み立てる必要がある。
よって、初心者と高齢者向きではないかなって気がします。

コイツ、、、手強いな

aitendo 3石SEPP-OTL

Webから回路図と部品表を拾って来て、信号を確認してみたのですがどうもマトモに動かない、って言うか動いていないんですね。こんな汚い波形が出てくるんですよ↓。
坂口杏里も逃げ出すぜ、これじゃ。

dEFAULT

このアンプは調整が必要です

aitendo-3V-MaxOutput-1V  aitendo-3V-MaxOutput

前章の波形見て調整が必要だなと感じたんだけど。Webに公開されてる回路図や部品表には、調整について一切触れられていない、ってか記載がないのね。SEPP-OTL回路のバイアスや中点電位について知識があって、最低でもテスター位を持っていないと調整不能でなんだ、動かねぇじゃんって結末になりかねない。

よって、aitendoのディスクリート回路のキットは上級者向けなのかも知れない。

基板がボロいので、半田付けで罠がまっていて、完成後も調整が必要ってダブルトラップですもん。で、どうやって料理するかって言うと、VR2で中点電位を電源電圧の1/2位に合わせます。続いてVR3で出力段のバイアス電流を調整します。無信号時に5mA程度流れる様にしておけば、概ねOKです。

そこまでやって、上の波形が出てきました。電源電圧3Vで1V程度の出力が出ていますので、まぁそんなもんかなって感じです。右側の波形は最大でどこまで出るか確認した波形で、調整をもう少し追い込めば上下均等にクリップするんじゃないかと思います。

もう一個罠がまっていた(暴走するぞ)

中点電位とバイアスの調整で、何とか使えるかなって状態に持って行ったのだけど。このとき電源電圧は3Vで調整したのね。説明書には『電源電圧:3V-6V』って書かれていたので、6Vにしようと徐々に電源電圧を上げて行ったら、4.5Vを過ぎたあたりで、ガツンと電流が流れ始めて、どんどん上昇していくんですよ。
それまで40mA程度だったのが、いきなり300mA超過って明らかにおかしい。俗に言う熱暴走って奴みたいで、慌てて電源を切ったので壊れなかったですけど、気が付かないとトランジスタが壊れていたかも知れない。6Vで調整して3Vに落とすって流れなら問題は起きなかったと思うけどね。そうゆう意味では、ICって凄いと思うな。3V-12Vまで動作して、特に何もしなくても暴走しないし、過熱保護回路まで内蔵してるんだもんね。
たった3石なので、ゲインも取れないし、安定性だってあまり期待出来ないし。

1KHz-50mV_hizumi

やっぱりOTL回路は凄いな

aitendo-3V-FRA-20mV-1

ダブルトラップを何とかクリアして、周波数特性までやっと辿り着きました。

秋月のTA-7368キットよりも95円高くて基板もボロいし、調整しなきゃ使えないなんて、わざわざこれを選ぶ理由が薄れてくるのだけど。ま、興味本位の実験ですから、どんなもんかってのを知っておかないとね。

僅か3石なので、ゲインは低めで30db位、低域は500Hzあたりから落ちてきてるので、硬い音って言うか、ラジオらしい音かも知れない。ただ気に入らないのが、位相が2.5KHzあたりで急激に廻ってるんですね。この程度なら発振するほどじゃないけど、こんなところでクルっと廻るのは嫌だな。とは言っても、トランス式より遙かにマシな特性なんじゃないかと思う訳ですよ。あくまでもトランジスタで組みたいって言うなら、コレもアリなんじゃね?って思います → ちゃんとバイアスや中点電位の調整が出来るひと限定、ね。

aitendo 3石SEPP-OTL

こんなデカイのは必要かな

ta7252_kiban

ラジオのアンプ如きに、12Vで5Wクラスのアンプってどうなのよとも思うのだけど。既にディスコンだし、500円だったから思わず買ってしまった東芝オリジナルのTA-7252のアンプキット。価格対出力パワーで比べたら抜群にコストパフォーマンス高い訳ですよ、500円で5Wクラスですからね。

ただ、相応に放熱に気を遣ってやらないといけないとか、電源に12Vが必要って面倒なところはありますけど。用途がカーラジオやカーステレオを想定していますから、保護回路もしっかりしてるでしょうし、それなりの特性は持ってると思うのね。

秋月電子で売ってます。東芝TA7252APオーディオアンプキット 500円 (2017.09.13現在)

やっぱりパワフルだわ

TA7252-1

コイツは調整なんかする必要なくて、接続したらすぐに動作した(当たり前だけど)。どこまでパワー出るかなと波形が歪むまで入力を入れてみたら、13V(pk-pk)を少し越えたところでクリップが始まった。暫くそのままにしていたら、負荷抵抗があっちっちになって臭って来た。今まではICが発熱で臭くなるって事はあったけど、負荷抵抗が焼けて臭うなんてなかったもんな。さすが、2Ω駆動可能、って言うだけあるわ。やっぱりパワフルだわ。

TA7252-AFR

周波数特性は兄弟のTA7368と良く似た感じで、100Hz越えたあたりからフラットだし申し分ないでしょ。これに12センチとか16センチのスピーカー接続したら、結構使えるんじゃないかと思うな。

問題は12Vの電源と放熱処理だけどね。

どれにするか

4種類のアンプを比較してみたのですが。面白さではaitendoの3石SEPP-OTLアンプが一番面白いと思うのね、3Vから使えるし。但し、調整しなきゃいけないし、うっかりすると熱暴走する危険もはらんでいる。

使いやすさと電源電圧範囲の広さって意味では、LM-386もTA-7368も互角かなって思う。

でも、LM-386キットはTA-7368キットより95円高くて395円、そして基板がボロい。安心して弄り倒せるのは秋月のTA-7368キットの方かな。

最後のTA-7252キットは、これで500円、ステレオで揃えても1000円ですよ。更に探せば2ch(あのゴミ掲示板の事じゃないぞ)内蔵の1チップIC使ったキットが1000円以下で存在したりする。ちょっと贅沢に、良いスピーカー使って聴きたいって方針には向いてるかもね。

今回は電源の制約や、お手軽さを勘案してTA-7368キットで行こうかなと思っていますけど。たかがアンプでも、こうやってオシロで遊ぶと個性が見えて面白いですね。

(ken)

TA7368

radio1ban