東のJOAKとくれば、西のJOBKと相場は決まっている。
スタッフkenが、果敢にも、日本国ラジオ局の総本山、NHK東京第1放送局(JOAK)ラジオ送信所に潜入したのに刺激されて、西の総本山、NHK大阪第1放送局(JOBK)ラジオ送信所と、行きがかりのラッキーにより、NHK大阪第2放送局(JOBB)ラジオ送信所に潜入して来た。でも、kenのように、警備員のおじさんに職質されるのは嫌なので、ソ~っと。
実は、潜入の目的は別にあり、その時、重要な任務を抱えていた。
NHK大阪第一放送(三原ラジオ送信所)
久しぶりに、ジジババ通院の運転手として、大阪府羽曳野市にやって来た。
阪和自動車道と南阪奈道路が交差する三原JCT(ジャンクション)付近に来ると、紅白色の大きな鉄塔が見えてくる。高速道路を挟んで大きなのが2本建っている(他にも小さいのが何本か)。
南側が、NHK大阪第一放送ラジオ局(JOBK)の送信アンテナだ(上の写真)。こちらは美原町にあるので美原送信所と呼ばれる。これが、あの玉音放送を鳴らしたアンテナだと思うと.......いや、何も感じない。
さらに接近しようしたが、予約時間がどうのこうのとなったので先を急いだ。
北上してしばらくすると、羽曳野市に入り、NHK大阪第二放送局(JOBB)の送信アンテナが見える。こちらは羽曳野送信所と呼ばれる。水辺の合間に建っている。周囲に水があると放射効率が良くて良く飛ぶのかな?だったら、第一放送もそうすべきだし。鉄塔が倒壊しても死人が出ないようにしてるのか?まあ、そんな事はどうでも良いが、さすがに300KWの電波を間近で浴びると、頭がフラフラして来た。
ウソです。
アンテナが傾いて写ってますが、チープカメラと、ヘボカメラマンのせいです。
ジジババを病院に降ろして、急いでアンテナの見える方に向かう。テンションは上がりっぱなしだ。
透ける空、天を突くNHKアンテナ!なんちゃって。
てっぺんに容量環の冠が見えてきた。送信所の入り口は近いはずだ。でも閉まってるだろなあ。そんなに都合良く開いてたら人生苦労せんわなあ~。まあ、局舎の看板くらいは撮れるでしょ。
ア・イ・テ・マ・シ・タ...(@_@)
ナント、全開でした...
「この付近にゴミを捨てないで下さい。by NHK」
ハイハイ。
さて、実際の話、潜入、いや、お邪魔して良いものかどうか??
まさか、本当に開いてるとは思ってなかったよ(狼狽笑)。
想定外の事態に緊張が走る。
kenのJOAK事件の情景が頭をよぎる...
誰か人がいれば交渉できるのに。
しばらくの時間、入り口でずっと一時停止状態で固まる。
いくら待っても人っ子一人来ない。
「不用心やなあ」「アルカイダが来たらどうすんの?」
自分がそんな事を心配する必要は無い訳だが。
やりましたよ~。決定的なスクープ写真!!
このまま引き返したら、男がすたる、いや、無線ラジオヲタクの名がすたる。で、何時でも逃亡できるように、帰路に向けて車を停め、徒歩で侵入いや、進入を開始した。
せめてこれだけはカメラに収めようと考えていた看板をパシャリ!
なんと開局が、昭和8年6月26日とは..
ここで、送信所情報をまとめてみる。
NHK大阪放送局羽曳野ラジオ放送所
放送局名称: NHK大阪第2放送ラジオ
呼出符号: JOBB
送信空中線: 3方4段 支線式トラス柱 高さ 155.2m
空中線位置: 34.554380N , 135.568440E
送信周波数: 828KHz
送信出力: 300KW
自家発電装置: 1,000KVA
開局年月: 昭和8年6月26日
NHK大阪放送局美原ラジオ放送所
放送局名称: NHK大阪第1放送ラジオ
呼出符号: JOBK
送信空中線: 形式は看板が読めなくて不明 高さ 196m
空中線位置: 34.550618N , 135.567169E
送信周波数: 666KHz
送信出力: 100KW
自家発電装置: 825KVA
開局年月: 大正14年6月1日
★注意★
上記の情報データを、軍事目的に使用しないように。(する訳ないか)
NHKは、放送所と呼んでいるが、一般的には送信所という呼び方の方が多いようだ。そう言えば、送信所(放送所)に対して、スタジオのある所を演奏所という呼び方をする。この演奏所という用語が何ともお堅くて古めかしい。法律用語か、役人言葉だろうか?演奏所を見るたびに、赤茶けたカビ臭く感じる。どうでも良い事だけど。
現場の話に戻る。羽曳野放送所(NHK第2 JOBB)アンテナの全景だ。
また傾いている。PhotoShop職人すれば良かったかな?
アンテナの横に小さな局舎がある。建物の中では300KWの送信機がうなっているのだろう。
垂直アンテナの高さを短縮させる働きをする、てっぺんの容量環は、このクラスになると網の目のデザインが複雑になっている。放射線状じゃなくて蜘蛛の巣みたいだ。こんなの初めて見た。碍子の大きさも半端じゃないみたいだ。
マイクロ波の中継回線か。パラボラアンテナは、東方向の生駒山に向いていたように思う。
米軍向けの謀略放送送信所
太平洋戦争の時、このあたりから、米軍向けの謀略放送を送信していたらしい。沖縄戦が激化している頃だという。大阪堺に送信所があったというから、美原送信所の事か?
東京ローズが「ヘイ!お前のワイフは、本国で浮気してるよ」とか「坊や~。ママのいるおうちに帰りなさい」というふうに、米軍兵士の戦意を削ぐような放送を、繰り返し繰り返し流していたらしい。
我が旧大日本帝国軍は、なんとバカげた事をやっていたのか。アメリカ人が、こんな放送聞く訳ないだろと思っていた。
終戦後、GHQの通信技官が、堺の送信所を調査に来た時、「ワタシ、沖縄デ、ココノ放送キイテマシタ」「ズット ファンデシタ」と話したとか。このとき、東京ローズの話で一気に意気投合したらしい。多くの米軍兵士が、その女性キャスターの声にメロメロだったそうだ。やるじゃんwww。
通信といえば、東京、銚子、長崎が主役だとずっと思っていたが、大阪堺も、通信の重要な役割を担っていたんだと知り、ちょっとうれしくなった。
いよいよミッション開始
大電力のNHK送信所に来たのは、実はこれ↓が目的だった。
鉱石ラジオである。
米国サンフランシスコに所在する(した?)MODERN RADIO LABORATORIES社の「No2 CRYSTAL」という鉱石ラジオである。これを、アメリカから入手していたのだが、鳴らない。全く鳴らない訳ではなくて、SSGで最大出力をかければ、蚊の泣くような音はするのだ。
鉱石ラジオの定石である、鉱石に針を刺す具合で、鳴ったり鳴らなかったりするはずだ。
コイルとバリコンの状態は良いから聞こえるはずなのだが。
自分の場合、鉱石ラジオは、この米国製が初めてである。
点接触型のゲルマニウムダイオード1本(定番1N60、SD34、OA90など)で、ゲルマラジオを作り、山へ登ってNHKを聞いた経験はある。和歌山の中電界地域に住む者にとっては、鉱石ラジオやゲルマラジオはちょっと辛いものがある。
寝床に鉱石ラジオをおいて、ラジオ深夜便を聞くのが夢である。しかし、JOBKが1,000KWくらいに増力してくれないと、実現は無理かも知れない。ちなみに、radio1banで送信可能な、最高空中線電力は5Wである(FT-817)。
真空管ラジオで我慢する事にする。
SSGで最大出力をかけても、まともに鳴らないのだから、いい加減あきらめれば良いものを...
送信出力300kWアンテナの間近で、固唾をのんでレシーバを耳に押し当てた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
突然、別機器の受話器から「ム・カ・エ・ニ・コ・イ!」
時間切れだ。
ジジババに「お前何してる?」と尋問されそうなので、急いで機材をトランクに押し込む。
重要任務は、トホホの失敗に終わった。
(kazu)