ラジオ少年(最近はラジオ中年?)の目標、4つ(4石と言った)のトランジスタを使った、ス-パーヘテロダイン方式のラジオを作ってみました。100円ショップで買ってきたケースに入れて鳴らしてみると、以外にもとてもいい感じで鳴ってくれます。ベッドラジオには欠かせません。
初めて電源を入れた直後の音声1(NHK大阪 666KHz を、和歌山県かつらぎ町で受信)
4石スーパーラジオの回路構成は、昭和のスタンダードラジオだった真空管の5球スーパーと同様です。感度は、フェライトコアを使ったバーアンテナを使っている分、外部アンテナは不要で、感度も良いようです。真空管の”音が良い”のは有名ですが、トランジスタでも、なかなかのもんです(^o^)v
4石スーパーラジオの製作をはじめたきっかけは、あの”100円ラジオ”への対抗心からです。価格ではとてもじゃないが”中国製100円ラジオ”にはかなわないけれど、スピーカーで鳴らせて実用的で、シンプルかつ性能の良い”国産自作ラジオ”を作ってみました。
誰でも必ず鳴らせるラジオを...
と、なると、できる限りシンプルで、部品は入手が容易でなければならないでしょう。
いろいろ探しているうちに、昭和52年ごろの「はじめてトランジスタ回路を設計する本」に掲載されていた、4石スーパーラジオの製作記事を見つけました。かの有名な奥澤清吉先生の本で、とてもわかりやすく設計手法を解説されています。
回路は、100円AMラジオと同様、基本中の基本の回路です。しかも4石でスピーカーもガンガン鳴らせる優れものです。私の受信値は、和歌山県かつらぎ町で、大阪の大電力放送局から、60~80Kmくらい離れた田舎ですが、ほとんどの局を受信できます。この記事を書くまでに2台製作しましたが、すべて成功しています。製作した4石スーパラジオの回路図はこれです。画像をクリックすると大きな画像になります。
↓完成直後の4石スーパーラジオ(2台目)
4石スーパーラジオと、5球スーパーラジオ
真空管式の5球スーパーラジオと、4石スーパーラジオの回路構成は、よく似た構成です。
局発・変換 回路 |
中間周波 増幅回路 |
検波回路 | 低周波 増幅回路 |
電力増幅 回路 |
電源回路 |
6BE6 | 6BA6 | 6AV6(1/2) | 6AV6(2/2) | 6AR5 | 5MK9 |
2SC372 | 2SC372 | IN60 | 2SC372 | 2SC735 | 乾電池 |
2SC1815-Y | 2SC1815-Y | 1SS99 | 2SC1815-Y | 2SC1959-Y | 乾電池 |
上段が、5球スーパーラジオで使用されている代表的な真空管です。中段が、昭和の、トランジスタラジオ全盛時代に使用されたトランジスタ。下段(黄色)が、今回4石ス-パーラジオの製作に使用したトランジスタです。下段(黄色)のトランジスタは、現在どれも現在市場に出回っており入手可能です。
測定機で検証はしてませんが、受信機としての性能である、感度、選択度、忠実度は、よく似ているんじゃないかなあ、と思います。5球スーパーラジオは数Wくらいの大音量で鳴りますが、4石スーパーラジオはそんなに大きくは鳴りません。まあ、真空管の”音の良さ”は、諸先輩が多くを語っておられますので、若輩者の私は何も言いません。
違いは、同調回路です。5球スーパーラジオは、直径数cmのベークライトの筒に巻いた同調コイルと、あの大きなバリコンです。アンテナは、外部に10mくらいのワイヤー型アンテナが必要です。実際はそんなに長くなくても受信できますが。
4石スーパーラジオは、フェライトコアにコイルを巻いた”バー・アンテナ”とバリコンの組み合わせで、放送局に同調します。また”バー・アンテナ”は、強い指向性のあるアンテナの役目を兼ねています。だから、外部アンテナは不要です。トランジスタラジオの感度は、このバーアンテナの性能によるところに多いのではないかと思います。
中波BCL愛好家の中で、特に高感度で有名な、「SONY ICF-EX5」ラジオも、大型(長い)バーアンテナを使っているからだと思います。長・中・短波の無線方位測定機(方向探知器、”方探”)も、光電製作所のKODEN
KS550シリーズなどに、特大のバーアンテナを使っており、高周波増幅回路と併せて、非常に高感度に仕上げています。
使用部品の紹介
部品表はこちらです –> 4石スーパーラジオの部品一覧表
↓が4石トランジスタラジオの部品です。この他、電源スイッチ、スピーカ、若干の配線用線材と、ケースが揃えば組み立てられます。
トランジスタ
昔懐かし、シルクハット型(つば付き)トランジスタの、2SC372、2SC735や、ゲルマニウムトランジスタの2SA100、101,102、2SA12などがあれば、回路的にもレトロ調で良いのですが、入手が困難なので、今回は、安くて入手が容易なものに品番を変更しました。
局発・変換、中間周波増幅に、2SC1815-Y
低周波増幅・電力増幅(2段直結)に、2SC1815-Yと2SC1959
あわせて4(石)つのトランジスタを使用するので「4石ラジオ」になります。↓
2SC1815-Yの直流電流増幅率(hFE)
2SC1959-Yの直流電流増幅率(hFE)
hFE(直流電流増幅率)が大きいほど、増幅率が高くなるので、hFEが大きいほど良い、と、考えがちですが、そうではありません。無闇にhFEの大きいものを使っても、異常発振したり、音声が歪んだりします。原因は、増幅回路の定数が狂ってしまい、増幅に最適な動作点にならないからです。ONか、OFFのスイッチングしか使わない”デジタル派”の人には関係無いでしょうけど(笑)
どのトランジスタにも、hFE(直流電流増幅率)の大きさにはバラツキがあります。そこで製造メーカでは、品番の末尾に記号を付けて分類しています。
(東芝の例) 2SC1815-O Y GR BL
検波ダイオード
検波回路には、ゲルマニウムダイオード(1N60、1N34A、OA90、OA95など)が一番良いのですが、ショットキーバリアダイオード(1SS99)でも使用できます。知的電子実験スタッフのkenが、ラジオ小僧向け「ダイオードの順方向特性測定実験レポート」を読んでみると、”ゲルマ”に固執することも無いか?と。今回は、”1SS99”というショットキーバリアダイオードを使ってみました。
kenの実験レポートにもあるように、ダイオードの選定が、”音”などの性能を左右するようです。整流用ダイオードはダメです。よく出回っている”1S1855″などの小信号用ダイオードもダメです。どうしても使う場合は、回路を変更して、バイアスをかけて、動作点を変更する必要があります。無理にそんなことしなくても、ゲルマダイオードは入手可能です。
↓上から、1SS99(ショットキー)、1N60(ゲルマ)、1N60(ゲルマ)、OA90(ゲルマ)
バー・アンテナ(同調コイル)
ラジオの自作用バーアンテナと言えば、あさひ通信の”SL55X”がスーパーラジオ用として有名ですが、コイルからの引き回し線が、細く、非常に頼りない感じです。リッツ線?と言うのか、絶縁膜の上に布みたいなのが巻いてあって、ハンダ付けに大変苦労します。↓のバー・アンテナは、大阪日本橋の電子部品ショップ”デジット”においてある、ス-パーラジオ用のバー・アンテナです。このアンテナの良い所は、2.54mmピッチのピン端子があり、汎用基板などへの取り付けと配線がとても楽です。インダクタンスは約600uHです。
↓2.54mmピッチのピン端子が出ており、配線が楽。それにしっかり取り付けられます。
ポリ・バリコン
スーパーラジオ用の2連トラッキング・レス・バリコンです。最大容量が、アンテナ側が160PF、局発側が約80PFです。これで局発側が、受信周波数より455KHz高く発振し、周波数混合回路でその差の455KHzを後段の中間周波増幅回路へ送ります。これがスーパーヘテロダイン方式ラジオのしくみです。受信周波数が変わっても、常に455KHzを後段に送ります。こうすると、安定した低い周波数で楽に信号増幅ができるので、高利得になります。また、455KHzくらいだと、安価なフィルタ回路(IFTやセラミックフィルタなど)が使えるので、良い選択度が得られる、というメリットがあります。現在のほとんどのラジオや受信機は、この方式を使っています。
4石スーパーラジオの“スーパー”は、”最高の”という意味では無く、スーパーヘテロダイン方式ラジオの略称です。
発振コイル・中間周波トランス
発振コイルは、OSCコイル、”赤コイル”ともいいます。
中間周波トランスはIFTとも言います。初段用が”黄コイル”、段間用が”白コイル”、検波段用が”黒コイル”といいます。
色は、調整用コアに塗られた色をあらわしています。
中間周波増幅を2段にする場合は、3色(黄、白、黒)すべてを使用します。今回のように、中間周波増幅を1段で済ませる4石スーパーラジオは、黄と黒のIFTを使用します。
と言っても、色の違いは、1次と2次側のインピーダンスが微妙に異なるだけで、手持ちの色を代用してもOKです。
コイルの大きさは、トランジスタラジオ用として、7mm角と、10mm角があります。7mm角コイルは、2.54mmピッチの汎用基板に刺さりますが、10mm角はピンの間隔が異なり、加工が必要で面倒です。秋葉原では7mm角の入手は容易ですが、大阪日本橋にはどこにも売ってませんでした。
最近、デジット(共立電子産業)の店長さんに無理をお願いして店頭に並べてもらいました。感謝!
今回は、奥澤先生の記事を参考に、プリント基板をエッチングしたので、100mm角のコイルを使用します。
↓は、7mm角の発振コイルと中間周波トランス(左から赤、黄、黒)
![]() |
発振コイルの端子に注意してください。 左の写真のように、左3ピン、右2ピンにしてみると、左3ピン上: バリコンの一方側 左3ピン中: トランジスタのエミッタ側(発振TR側) 左3ピン下: バリコンと、アース 上~中間の抵抗が4~5Ωあります。 中~下間の抵抗が0.5~1Ω程度あります。右2ピン上: 電源側 右2ピン下: トランジスタのコレクタ側(発振TR側)) 上~下間の抵抗が0.5~1Ω程度あります。※汎用基板で手配線をした場合に、発振しない原因になりやすいので注意が必要です |
アウトプットトランス(出力トランス)
昔は、山水(サンスイ)の”STシリーズ”という、トランジスタ用トランスで有名でした。
サンスイは現在でも何とか入手できるかもしれませんが、今回は、ST-81互換品で、一次側が1KΩ、2次側が8Ωのトランスを使用します。
(kazu)