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"定番"可変電源レギュレータ「LM317」

プロも木から...~0Vから可変可能なカンタン?電源のはなし

結構"自作の治具"で仕事してます

最近のLSIは低電圧化進んで、ロジック部分の動作電圧が1V程度の物がフツーに出回る 様になって来ました。 今回動かして検証したいLSIが要求する電源は内部ロジック部分が1.2V、その他インターフェース部分やメモリ系が3.3Vを必要とします。
またLSI単体だけではなく周辺チップ(F-ROMやら、SVC等)も動かさなければならないので5Vも必要とします。回路全体としてはDC-DC Converterが組み込まれていて、必要な電源を供給してくれるのですが設定電圧を可変したいって場合にはどうも具合が良くない…。
仕方ない、作るか…。
・必要な機能は…
a) 1.2V、3.3V、5.0V の3系統の電圧が欲しい。
b) 各系統は独立して電圧調整したい。
c) 出力電流は1Aもあれば良い。
d) 外部の電気信号でON-OFFを制御したい。
e) 5.0Vの立ち上がりを基準に立ち上がり時間に遅延を持たせたい、且つ遅延時間は可変したい。

(図1)

上記要求を満たすべく検討すると…
a) b) c) の要求は可変タイプのICレギュレータで実現出来そう…っが!がががっです。
在庫部品から作らなければならいので、選択肢は限られます。
候補に挙がったSharpの"PQ30RV"シリーズは最低出力電圧が1.5Vなので落選。
次候補のLM317は最低1.2Vまで落とせるので何とか及第点。
可能であれば更に低い電圧が欲しい…。
データシートを眺めていたら0V~22V可変の応用回路がある。

(図2)

ふーん、内部基準電圧を無理矢理打ち消すのかぁ、けどLM113なんて在庫にないしなぁ。
ダイオード二個で代用してみっか。

d)の外部制御はどうする?
レギュレータの入力側にFETスイッチを入れて、ゲート制御すれば何とかなるっしょ...

(図3)
↓これは失敗作・・・残念っ!

↓これでやっとまともに動作した!

e)の遅延は?
タイマICを使って遅延パルスを作って、作って、作って…どうしよう。
そうだ、外部制御回路のゲートに割り込ませれば良いんじゃん。

基礎実験編

・本当に0Vから可変出来てちゃんと安定するのかを確認しなければならいので、LM113の代用で
1S954に登場願います。
・負電源はどうするのか…DC-DCコンバータの-12V版があるのでそれを流用する事に。
・代用ダイオードに流す電流は…LM317の内部動作電流が吸い込めれば良いので20mAくらいかな。
-12Vからダイオード二個分の1.2Vを引き算すると10.8V。それで20mAなので540Ω。
早速実験してみると…

(図4)

・確かに電圧は0Vまで下がるが、それ以下まで下がってしまう事が判明。
レギュレータの内部基準電圧より負電圧の方が大きい事が原因、しかも期待した程安定度が良くない。
負電源のインピーダンスを下げて、かつVrefもバランスさせないと…。
・LM317の負電源版のLM337を使って最低出力電圧にセットすれば、安定度や温度特性の問題って
解決出来るのでは…早速実験です

(図5)

やりました!うまく動作するし出力を絞っても-10mV程度しかマイナス側に振れないんでまぁ良し
でしょう、これで基礎回路は決定です。

 

電圧配分と放熱について

・LM317のデータシートを見るとVinとVoutの電圧差が3V以上ないと良好な特性が得られないようなので…。
・Vinは12V又はノートPCのACアダプタ(16V)で使用する。
負荷電流を1Aと想定した場合の最大損失は5V系で11W、3.3V系で12.7W、1.2V系で14.8Wの損失
となり、全て熱になり合計約40Wとなる。
・1.2V系は5Vの出力を分割してもらい損失を抑える事も検討したのですが、"独立した起動遅延が
出来なくなる"のが制限となり、もったいない事を承知で電気を沢山喰わせる事にしました。

・小型の放熱器では到底カバー出来ない熱量なので何かないと実験室を物色したところ廃棄予定の
PCが眼につきました、そうですCPUの放熱器、ゴージャスな事にファンまで付いてるじゃないですか。
・因みにPentium4-2.6 CGHzに付いていたものなので、CPUの最大消費電力を調べると69W。
これは使える、けど穴空け加工がいるな、付属のファンじゃ収まりが良くないからファンも交換する事に。
で、出来上がったのが↓の写真、あんまり出来が良くないですが…

(図6)

↓実物・・・配線がのたくってます。

・面倒な機械加工(と言っても穴空けて、M3のタップを立てただけですが)が終わったんで後は ユニバーサル基板に回路を組むだけです。
・部品の在庫が切れてしまい、あるのは3AタイプのLM350、互換があるし電流容量も倍になるから
LM350を使う事にします。

動作させてみる・・・

・組上がったんで最終チェック後電源をいれてみると。
デジタルメータで見てる限り、ちゃんと電圧も変化するし、安定してる。
出力のリップルやノイズはどうかと思ってプローブを当ててびっくり、200mV位の振幅で10khzのノイズが乗ってる。
更にみると200Hz位のうねりもある。
う~ん、これは発振してやがるるに違いない、幾つか思い当たる事もあるし…。
・まず、放熱器に取り付ける関係でリードを延長してるLM350にパスコン攻撃をかけます。
無負荷ではおとなしくなったんですが、負荷をかけるとまた発振しやがるするので基板を見回す…。
・電圧可変のVRに延びてるフラットケーブルがインダクタンスになって発振を誘発してるようなのでそこにもパスコン攻撃をかけます。
-1.2VのLM338も200Hzで発振してやがるるのでパスコンの容量を0.1uF -> 0.47uFにして対策完了。


・製作後半年近く経ちますがトラブルもなく毎日仕事に活躍してくれています。
時間をみつけてケースに入れようかと思っているのですが、いまだ実現せずです。
・LM317/350シリーズは過去にも使った事があるのですが、発振器になってしまったのは初めての経験で、自分の腕を疑い、かなり凹みました。
原因は少々捻った使い方したのと、長い配線が原因で、たかが電源と少々なめてかかっていた部分があったと反省しています。やはり電気回路に長い配線は天敵です。

・以上極めてお気楽極楽な設計製作で生み出された電源の話でした。

↓完成した回路図。もう1組、1.2V系の回路がありますが、スペースを喰うので割愛しました。

(ken)