ラジオのテストオシレータを作ろう~トラッキング調整用回路編~

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次はいよいよトラッキング調整用オシレータだ

・基礎編(変調付455kHzオシレータのことです。前回までの記事をご覧下さい)はとりあえず何とかなったんで、IF回路の診断や調整は可能になりました。手持ちのジャンクラジオに接続してみます。

・ラジオの電源を入れて、テストオシレータの電源を入れます。出力レベルを少しずつ上げていくと、急にノイズが小さくなりました。変調レベル徐々に上げると、『ぴー』って聞こえてきました。更に変調を深くするとそれまで澄んだ『ぴー』だった音がちょっと濁った感じに変わります、これが過変調の音なんですね。

・ひとまず、動作もOKっぽいので、次のステップに進みます。

・いくら受信が出来るとは言っても、ダイヤル目盛りがあってないんじゃ、いま何処の周波数を受信してるのか見当がつきません。知った放送局ならその内容から推測もつきますが、それじゃぁラジオとして不合格だと思う訳です。 ・ダイヤルの目盛りを合わせる作業と、受信周波数によって起きる感度差を最小限に調整して追い込む作業を『トラッキング調整』と呼びます。

・一般的な中波ラジオだと低い方は600kHz、高い方は1400kHzあたりで調整する様です。製品にもよりますが、調整ポイント付近のダイヤル目盛りに▽マークが付いてる機種も見たことがあります。

※注意:あくまで、筆者の想像です、一説によると米国の非常時の災害放送がその周波数付近で流れるから、マーカーが打ってある、米国への輸出を意識しているからって説を何処かで読んだ気がします。

トラッキング調整用周波数を検討する

・一般的な汎用品で再現性が良く、精度の高い物が理想ですが、あまりコストはかけたくないってか、安く作りたいです。 ・まず、所望する仕様を決定します。 周波数は、1500kHz、600kHzは必須で、短波ラジオに応用が利く様に12MHzと4MHzも出せたらいいなぁ…です。 理想的にはそれぞれの周波数の発振回路を実装すれば良いのですが、それでは回路規模が大きくなるし、コストがかかります。

・発振方式は、精度や安定性を考慮するとLC回路は避けたいです、そうすると水晶発振かレゾネータを使う方式になります。 455kHz発生回路と同様に、高い周波数を源振として1/n分周するって方式はどうか検討してみると。実に悩ましい周波数関係であることが浮かび上がって来ます。

・12MHzをベースに考えると、4MHzは1/3、1.5MHzは1/8、600kHzは1/20です。1.5MHzは簡単に1/8分周で得られますが、他は分周比に奇数成分が入っています。 何が困るって、奇数成分の分周をすると、信号のデューティサイクル50%対50%でなくなってしまうんですね、これば分周って性格上仕方のないことで避けられません。 ↓例えば、6MHzを1/5分周すると、下の波形の様になってしまいます。

発振方式はどうしよう?

・さーてどうしたもんかな、これだけ狂うと幾ら同調回路でフィルタかけたって綺麗な正弦波になんかなりっこないし。。。

・そこで、リップルカウンタを思い出しました。
どういう物かって言うと、信号の上がりエッジで出力が反転する回路でFF(Flip-Flop)の
応用回路です。
但し、片エッジのみで出力が反転しますので、出力周波数は1/2になることが注意点です。
標準的なLogicだと”7474″等が一般的と思います。

・ちょっと予備実験してみましょう。
さっきの6MHzを1/5分周して派手にデューティが崩れた1.2MHzの信号を入れて
みると。。。

・見事に綺麗な600kHzが出てきました。 これで、奇数成分を含む分周もOK…いんや、そうは問屋が卸さなかったんですね。4MHzが問題なんです、1/3ってこれ以上分解出来ない比率な訳ですよ。

・ここで万策尽きるのも悔しいんで、ちょっと考えてみます。 源振が12MHzだから1/3な訳で、二倍の24Mhzにしたら、1/3して1/2するって事が可能になりますね。

・源振が24MHzでそれぞれ見直してみると。 12MHz -> 1/2分周でOK 4MHz -> 1/3×1/2でOK 1.5MHz -> 1/16でOK 600KHz -> 1/20×1/2でOK (←いきなり1/20は難しいので、実際は1/4×1/5×1/2に分解して分周する事にする) ◇ ◇ ◇

・ここでまた問題にぶち当たります、2のn乗の分周ならば、カンターICで簡単に実現出来るんですが、任意の分周って言うと、カウンターに幾つかのロジック回路を追加しなきゃいけない訳です。そんな事やりたくないし、設計するのも面倒です。何か使えるICないかなってデータシートを眺めていたら、プリセット付きカウンタって奴が居る訳ですな、74161って奴です。

・どんな動きをするかっていうと、何もしなければ普通の4ステージカウンターで1/2、1/4、1/8、1/16分周の信号と、キャリー信号が得られます。 こいつは4ビットのプリセット端子を持っていて、そこに任意の値をプリセットして、LOAD端子を叩いてやると値がプリセットされます。その状態でクロックを入れると、プリセットされた値までカウントするとキャリー信号が出てくるって動作をします。

・回路の実験をしてみたところ、一旦キャリーが出るとプリセットされた値がクリアされてしまうようなので、毎回LOADさせなければいけない様です。 それに、コイツは極悪な癖があって、キャリー信号にハザードが出ることで超有名なんですね、よってキャリー端子は使わない方が賢明な訳です。 ※ハザードとは:本来の信号以外に、クロックのエッジに同期したヒゲ状のスパイクノイズの事を指します。 ◇ ◇ ◇

・そんなこんなで、回路をくみ上げて波形を観察してみます。24MHzをベースにして、12MHz、4MHz、1.5MHz、600kHzの各信号です。

・4MHzと600kHzは先程もふれましたが、デューティサイクルが大幅に狂っていますのでトグルカウンタで波形整形しています、整形費用はIC一個分ですので非常にリーズナブルな整形だと思います(笑)。

共振回路コイルの選定

・後は共振回路で高調波を除去して、変調をかければ完成になります。1.5MHzと600kHzは中波ラジオのOSCコイルが流用可能です。 12MHzと4MHzは流石に流用は無理なので、FCZコイルを使おうかと画策中です。

・源振と分周回路を組み立ててみました、こんな感じになります。共振回路も一緒に搭載したいんですが、スペース的に厳しいかなぁ。

・裏面はこんな感じ(↓)、汚い配線でちょっと恥ずかしいかも。。。

トラッキング調整用オシレータ(600kHz・1500kHz・4MHz・12MHz)の回路図

・そして、回路図はこれです。全体を掲載しますんで、ちょっと大きいです。

・この回路で74161の分周比は1/2~1/9まで変更可能ですので、他にも任意の分周比を設定して、面白い応用が出来るかもしれないです。
使う人のアイディア次第ですね。

(ken)

目次~8回シリーズ~

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